昨日、映画館フォーラム山形で封切られた「FOUJITA」 を見ました。

Yesterday, I went to the movie “FOUJITA” story about a Japanese painter  Tsuguharu Foujita who represented “School of Paris” and ended his life as a French, directed by Kohei Oguri. A huge tree appeared in the movie and I found out it was a zelkova (keyaki in Japanese) tree in Higashine city of Yamagata Prefecture, my home. I went to see the tree today. It is estimated to be 1500 years old.

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小栗康平監督の10年ぶりの新作です。六作目の映画。世間的に見るとかなり寡作な監督です。

小栗監督の作品は、私は1996年に「眠る男」を劇場で見て以来、20年ぶりの鑑賞でした。

画家「藤田嗣治」と映画作家「小栗康平」の世界が重なりあい、芸術性の高い作品に仕上がっていました。

映画「FOUJITA」公式サイト/official site

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オダギリ・ジョーが藤田嗣治を好演

小栗康平監督の映画は、決して親切とは言えず、行間を自分で埋めていかないと理解できないようなもどかしさがあります。ハリウッド映画のようなわかりやすいカタルシスはありません。一シーンごとに完璧な映像美がそこにあり、その意味を読み解くことを観客に求めてきます。観客を選ぶ映画ともいえそうです。私も、この映画を一度で完全に理解できたとは思いません。でも、もう一度見てみたいという気持ちにさせられる映画です。

一度構図を決めたら、人物は動いてもカメラはほとんど動かない。(一部ズームバックするようなシーンがあったが)なにか、最近NHK BSでデジタルリマスター版を放送していた小津安二郎の作品とも似ている気がしましたが、調べてみたら、小栗監督の一番尊敬する映画監督は小津安二郎だとのことで、納得しました。

藤田嗣治は、二十代後半に渡仏、日本画の技法を西洋画に取り入れながら、「乳白色の肌」の裸婦像でエコール・ド・パリの代表的存在となり、フランスでは知らぬ者はいないといわれるほどの有名人になった画家です。しかし、その後日本に帰国、時局に応じて戦争画を描くようになります。映画では、その二つの時期が描かれています。戦後、戦争画を描いたことで半ば戦犯のような扱いを受けた傷心のフジタは、再度フランスに渡り、その後帰化、フランス人レオナール・フジタとして一生を終えました。

後半、フジタが日本の農村に疎開し、巨大なケヤキの前に立つシーンがあります。

そのケヤキが、私の住む山形県の、東根市にある「東根の大ケヤキ」であることに、パンフレットを読んでいて気づきました。(東根市はサクランボの生産量が日本一ということで知られています。)

映画の中では、パリで名声を得て日本に帰国、その後時代の要請で戦争画を描き、陸軍美術協会理事長という職にも就いたフジタが、このケヤキの前では寄る辺ない存在にしか見えないという重要なシーンです。

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東根の大ケヤキ(2015年12月27日撮影)Huge zelkova in Higashine

映画を見た後に、「東根の大ケヤキ」を訪れてみました。やはり、ものすごい迫力でした。

葉が落ちて枝だけになった冬のケヤキの方がむしろ、風雪に耐えて千年以上の歳月を生き延びてきたその樹木の生命力や情念のようなものが感じられるような気がしました。

国の特別天然記念物(ケヤキでは唯一)で、「日本の三大ケヤキ」と呼ばれているそうです。小田島長義という武将が築いた小田島城(東根城)の本丸跡にある東根市立東根小学校の敷地内にあります。樹齢は1500年以上ともいわれています。小田島城築城の際にはすでにかなりの大木であったと考えられています。

もちろん「東根の大ケヤキ」は地元ではよく知られいるのですが、映画のロケ地になったことも含め、ちょっとアピールが足りないような気もしました。小学校の向かいにある美容室で、大ケヤキの説明が載ったチラシを見学者に配られていたのですが、お話を聞くと、小栗監督もいらして、2日間ほどロケをしていかれたそうです。もう何十年もこの地でケヤキとともに過ごしてきて、催しがあるたびに付き合ってきたと、まるで家族のことのように感慨深げに語っておられたのが印象的でした。

でも、こんなに近しい方すら、山形市内でこの映画が上映中であることをご存じありませんでした。ましてや普通の山形県民にはほとんど伝わっていないでしょう。県や市、地元メディアなどが、こんな機会を利用してもっと情報発信して、山形県にはこんな素晴らしい自然遺産があるのだと、県内はもとより、もっと全国や世界にも発信していければよいのにと、ちょっと残念に思いました。(控えめなのはいいんですが、もっと気付いてもらう努力をしないと。)

映画「FOUJITA」は、見返すたびに何か発見がありそうです。できれば山形で上映中にもう一度見てみたいと思います。東京でもまだロングラン上映中です。興味のある方はぜひ足をお運びください。