2022年9月24日25日に山形市内で、JIA東北建築家大会2022山形が開催されました。
JIA(日本建築家協会)は、私も所属している、建築家の職能団体です。→JIAのホームページ

24日は、遊学館(山形県立図書館)の2階ホールで、「未来につなぐ―人・まち・建築」とテーマにした基調講演とパネルディスカッション、その後、「東日本大震災から10年」のエピローグイベントとしての総括が行われました。
開会宣言に続き、佐藤孝弘山形市長からのご祝辞、佐藤尚巳JIA会長からのご挨拶などを頂戴したあと、シンポジウムへと場面転換しました。
その後、松隈章氏による「人と地域を未来へ繋ぐ―文化資源としての建築を未来へ生かす活動」と題した基調講演が行われました。
聴竹居は京都の大山崎にある、建築家であり最初期の京都大学教授でもあった藤井厚二の代表作であり、2017年には国の重要文化財に指定されました。
松隈さんはその聴竹居がそれほど注目されていなかった頃から20年以上関わってこられ、現在は聴竹居の管理を行う聴竹居倶楽部の代表理事を務めておられます。
松隈さんが聴竹居に関わるようになったきっかけは、意外にも、1995年の阪神・淡路大震災で、神戸三宮の街の風景を形成していた古典主義的な意匠の近代建築(銀行店舗)が倒壊した時に、一部保存や修復などを検討する間もなく、数日で他の瓦礫とともに処分されるのを見て大きなショックを受けられたことだったといいます。それがなかったら、今、聴竹居に関わってはいないだろうと。
大手建設会社にも所属している松隈さんは、ご自宅のある神戸で1995年の阪神・淡路大震災を、2017年の東日本大震災も勤務先である東京で直接体験されました。戦後のもっとも大きな二つの地震の両方を経験された数少ない建築関係者でもあり、その観点から、今回「東日本大震災から10年」三部作のエピローグイベントとして位置づけられていた本大会にふさわしい内容についても触れていただきました。
その後、北原啓司氏と高谷時彦氏による事例紹介が行われ、さらに井上貴至氏、宮本晶朗氏、小松正和氏を交えて、6名でのパネルディスカッションが行われました。
講演会、事例紹介、パネルディスカッションにおけるご登壇者のご発言はそれぞれの専門分野からの具体性のある内容でした。登壇者の多さから、まとまりに欠けるものになりはしないかと少々懸念しておりましたが、各々の個性が粒だち、互いに刺激しあいながらも、全体としては見事に「つながり」、未来に向けて大きな学びのあるシンポジウムとなりました。参加者の皆さまからの評判も上々でした。大きな自然災害や戦災を免れ、江戸、明治、大正、昭和、平成と、その時代ごとの建物が折り重なるようにして都市が形成されている城下町都市山形の可能性を再確認することもできました。


まち歩きのあとは、旧山形師範学校(重文)の前などを通りながら、馬見ヶ崎川へと向かい、
秋日和のなか、コロナ禍で中止となっていた、JIA東北支部大会恒例の芋煮会が3年ぶりに開催され、会員同士で親睦を深めました。
このようにして、「JIA東北建築家大会2022山形」は、おかげさまで、無事、幕を閉じることができました。
この大会のためにはるばる東京からお越しいただいた佐藤尚巳JIA会長、ご支援いただいたJIA東北支部の皆さん、協力会の皆さん、ご後援いただいた各種団体、開催地である山形県、山形市、そして貴重なお話をいただいた講師の先生方、あらためて感謝申し上げます。
最後に、準備に当たったJIA山形地域会の会員の皆さん、お疲れさまでした。
松隈章さんの「山形は周回遅れのトップランナーになれる」という言葉が心に残りました。「開発に乗り遅れて全国でもビリの方だと思っていたら、文化的価値がある建築物や街並みが荒らされずに残り、気づけば先頭を走っていた」という意味合いだと思います。その言葉を励みに、山形のまちづくりにも微力ながら関わっていくことができればと思います。