2019年4月4日 べトナム建築旅行4日目は、ホーチミンから飛行機で1時間ほど移動し、国の中央部にあるダナン近郊の建物を見せてもらいました。

この日はまず、ホーチミンを拠点に活動するTropical Spaceという設計事務所によるThe Termitary Houseを見学しました。

この住宅を設計した建築家の両親の家です。ピアノやギターの教室もこの建物の中で営んでいるようです。

門を右手に曲がると玄関扉が現れます。

ベトナムでは、鉄筋コンクリート(RC)のラーメン(ドイツ語で柱梁の意)構造のフレームにレンガ積みの壁をはめ込んだ後、モルタルで平滑に仕上げて、ペンキで塗装するのが一般的です。

トップライトからの自然光が降り注ぐ中央のコモンスペース

この住宅では、その基本的な工法は踏襲しながら、仕上げのモルタルとペンキに手間をかける代わりに、レンガを少しずつずらしながら丁寧に積むことで孔あきのスクリーンを構築し、光や風を制御しながら内部に導入しています。

通常表に顕れないレンガをそのまま素地仕上げとして生かすことで、ミニマルで抽象性の高い空間を実現しています。

自然光の漏れ落ちる中央の二層吹き抜け空間が、音楽を楽しみながら教える場になっていると同時に、家族の心の中心になっているようです。

 

きわめて開放的な印象ですが、孔あきのレンガのスクリーンの外側には、通常の目の詰まったレンガ積みの壁とガラス窓があり、内外の空気の流通は制御できる構成にはなっているようです。

エアコンらしきものもないので、風と緑、そして入れ子(二重構造)の構成で暑さをしのいでいるのだろうと思います。

今回、屋上までは上がりませんでしたが、屋上庭園もあるようです。

レンガによる肌理も効果的ですが、適度なスケール感を併せ持つことで、住宅に必要な身体性を保っているように感じました。

表面の刻印から、通常、間仕切りなどに積まれる工業的なレンガを(あえて?)そのまま使っていることがわかります。それがアクセントにもなっていますね。

2階 Cella

設備のディテールは発展途上というか、まったくこだわっていないという感じだが… これはこれで完成形?

2階から1階へと降りていく階段

敷地西側の庭

この壁面は、レンガの一部を規則的に前に出すことで表情をつくっていますね。建築家のこだわりが感じられます。

建築家の母が誇らしげに案内してくれたのがとても印象的に残っています。強いコンセプトと、豊かでインパクトのある内部空間を持ちながらも、住み心地がよさそうな家でした。

見学させていただきありがとうございました。