3月1日に行われた、米大統領選候補者の指名争いの序盤の最大決戦スーパーチューズデイを制した共和党のドナルド・トランプ氏が日本でも注目をあつめています。

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TVでは「アメリカの不動産王」と少し揶揄もこめて表現されています。これまでも過激な言動がしばしば話題になってきましたね。ローマ法王から批判され応酬したりしていました。

昨年9月にアメリカに旅行に行き、大学同期で現地在住の写真家玉木興陽君にNYを案内してもらったときに、トランプ氏が大統領候補となっていることを初めて知りました。

それまでは、「トランプ・タワー」という建物の名前を聞いたことがある程度だったのですが、アメリカでは知らない人はいないほどの有名人のようで、私も少し気をつけてみるようにしてきましたが、日本でこれほど大きく取り上げられるようになろうとは思ってもみませんでした。

トランプ・タワーは1983年に竣工した、58階建ての建物。NY五番街に面しています。

現在は、ドナルド・トランプ氏と、エクイタブル生命保険が共同所有しています。

この建物には、トランプ氏の思想・信条や人間性の一端が表れているように思います。偏見を助長するつもりはないのですが(笑)、日本では情報がそれほど多くないトランプ氏の一面を知っていただくためにも、「トランプ・タワー」を紹介しておきましょう。訪問日は2015年9月24日です。

I visited Trump Tower in NY last September. The owner of this building is Donald Trump, one of the Republican candidates of the next President of US. He won Super Tuesday on March 1st in 7 states among 11.

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五番街から見上げる
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左側の建物の入口上部に「TRUMP TOWER」の文字が見えますね。
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トランプ・タワー越しに、フィリップ・ジョンソン設計の「AT&Tビル」(現ソニービル)を見る。

NHKの「あさイチ」では、ドナルド・トランプは、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の登場人物で、マイケル・J・フォックス演じる主人公マーティを困らせる、ビフ・タネンのモデルであると紹介されていました。(特に、PART IIで、マーティが未来からもってきたスポーツ年鑑を悪知恵を働かせて利用し、くじで大儲けをして成金(不動産王?)にのし上がる描写など。)

なんでも、この映画を担当した脚本家がそのように証言しているそうで。

日本のTVでもあまりいいイメージでは報道されていませんが、アメリカでのトランプ氏の一般的なイメージも映画の中の「ビフ・タネン」のようなものなのかもしれません。

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通りと反対側からアプローチ(IBMビル側から)
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1階にはファッションのテナントが入っている。

私がアメリカで話を聞いたときは、話題が先行しているが、いつかは消える泡沫候補、こんな人物がアメリカ大統領になったら世も末という、そんな感想を良識ある人々は持っているようにとらえました。

大統領選となると、普通その候補は、多様な支持者から選挙資金の援助を仰がないといけないので、各方面に気を遣ってなかなか歯切れのよいことを言えないようなのですが、トランプ氏の場合、自己資金で選挙を戦えるので、自分の思ったことをズバズバいう、それが今の政治に不満をもっている「一部のアメリカ人」の本音と合致して、支持を集めているようです。

スーパーチューズデイでは、11の州のうち7つでトランプ氏が勝利しました。「一部」というのが、「相当数」あるいは「大多数」だったということでしょうか?

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1階メインエントランスとつながった5層吹き抜けの空間は、カフェとして開放されている。
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アトリウムには滝が流れている
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上部はスペースフレームで支持されたトップライトとなっており、自然光が降り注ぐ。

このトランプタワーには多くのセレブが居住しています。

ドナルド・トランプ氏は、ほかにも多くの不動産物件を手掛け、また所有しており、特に国連ビルの近く、イースト・リバー沿いの高級マンション「トランプ・ワールド・タワー」(2001年竣工)は有名です。262m、72階建て、完成当時は世界で一番高い居住用ビルでした。かつてはNYヤンキースの松井秀喜外野手やデレク・ジーター遊撃手が居を構え、現在は田中将大投手が住んでいます。マイクロソフト創業者で世界一の富豪として知られるビル・ゲイツや歌手のビヨンセ、スターウォーズ等で有名な人気俳優のハリソン・フォードも住んでいるそうです。ちょっと前の、日本の六本木ヒルズのような感じでしょうか?(ヒルズ族なんて言葉がありましたね。)

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たしか、トイレの入り口だったとおもう
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トイレに通じる廊下
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建物の中心となるアトリウムに戻る

全体に、金色の金物、ミラーガラス、赤い大理石が多用され、ゴージャスというか、派手というか、いかにも不動産王の好みそうな内外装です。

銀色ではなく、金色を使ったのはトランプ氏の趣味でしょう。現地で、トランプ氏は金色が好きだと聞いたように記憶しています。

そういえば、秀吉の黄金の茶室というのがありましたね。

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秀吉の黄金の茶室(MOA美術館
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同上

建物の低層部に、みなが集える公共空間をつくろうという、その思想自体は素晴らしいと思います。

今から33年前、1983年の竣工ですが、日本でいえば「バブル真っ盛り」というイメージで、その当時はよかったのでしょうが、今日的にみると、このような内装が現役でいられること自体、そうとう時代錯誤な感じもします。

NYは近年、不動産投資が盛んで、新しい超高層ビルがたくさん建っていますが、もっと違う形でより高い価値を求めており、ここまであからさまに「派手な」建物は最近ではなかったように思います。

しかし、たぶんトランプ氏は、この建物を時代錯誤とは思わず、そのまま肯定するでしょう。このヴィジュアルは、トランプ氏の「強いアメリカを取り戻そう」という主張と重なって見えます。

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トランプ・タワーの背後には、対照的にミニマルな表現のラファエル・ヴィニオリの高層住宅 432 Park Avenue が見える。(以前紹介しました。クリックすれば記事が読めます。)

もし、トランプ氏がアメリカの大統領になったら、憲法上の制約など、日本の立場に配慮してきた今までの大統領とは違い、そのまま本音をぶつけてくるでしょう。そういった意味で、日本にも少なからぬ影響が出てくるでしょう。

本音をぶつけあうことで、今までとは違う日米関係が生まれてくるかもしれませんが、日本の政治家は、「ビフ・タネン」(のモデル)とうまく渡り合うことができるでしょうか?その時は、日本にとって、トランプ氏が最も重要な国のプレジデントとなるわけですから、なかなか手ごわそうですが、仲良くしていかなければなりませんね。

他国のことではありますが、非常に気になりますね。

(玉木君、もし違うことがあれば教えてくださいね。)