再び、9月20日のアメリカ。
延々とドライブ。
フィラデルフィアからピッツバーグ郊外のミル・ランに向けて
前を走ってた車が気持ちよさそうでした
少しずつ車線数が減って
田舎道を通って
人里離れた場所へ
ちなみにこれだけ走ってきました。
もともと、個人の別荘ですが、今はペンシルベニア歴史・博物館委員会が指定したCommonwealth Treasure (国家の宝=国宝?)になっています。
指定された2000年以降でしょうか?このような案内所が、整備されています。この多角形のあずまやのまわりには、カフェやグッズを売るショップが取り付いていました。
落水荘はピッツバーグの百貨店経営者のカウフマン氏の依頼を受けて設計されました。
週末住宅ということで、ピッツバーグ近郊だと思いそう書きましたが、自宅から100kmも離れていたそうです。
(さすがアメリカと思いましたが、東京・軽井沢間も150km位あるようですからそんなものでしょうか)
1963年エドガー・カウフマンJr.が、一般に公開すべく西ペンシルベニアの管理委員会に寄贈し、現在に至っています。
施主の息子のエドガーJr.は若いころから、美術に関心がありオーストリアやイタリアで絵画を学びました。
ヨーロッパから戻り、アメリカ流になじめずにいた彼にある友人が、ライトの『自伝』を勧めてくれ、ライトに共感するようになり、やがてライトの主宰するタリアセン・フェローシップに参加します。
両親もタリアセンを訪れ、ライトの住まいに感銘を受け、やがて、息子を介して新しい別荘を依頼することになります。
ライトは、敷地を訪れた時に、「元の家よりハイウェイから離したいのなら、滝に近づけたほうがきっといい」とだけ言ったそうですが、施主はまさか滝の真上に家を置くとは思ってもみなかったそうです。
しかし、その第一案を見た時に、カウフマン夫妻は一切異論を差しはさまず、それがほぼ最終案となったそうです。
しかし、実際最初に見えてくるのはこんな絵です。
森の中を歩いてくると、前の写真の撮影位置(この位置は全部見学が終わってから行くように設定されている)より先に、割と建物の近くに出てきます。
もともとこのルートだったのか、一般公開されるようになってこうなったのかはわかりませんが、できれば(2)の絵を見てからアプローチしたいですよね。
ランドスケープで対応できなったのかな?とも思いますが、もともと個人の別荘なので、そこまでやらなかったのかもしれません。
それにしても、自然と建築が絶妙に融合しながら、空間のダイナミックさも際立っており、見事としか言いようがありません。
スチールサッシュのチェロキー・レッドは、タリアセンなどでもみられ、ライトが好んで使った色のようです。
学生時代に行った展覧会のカタログの表紙も、この落水荘でした。
1991年セゾン美術館で開催された、「フランク・ロイド・ライト回顧展」。実行委員長はなんと、今は亡き黒川紀章氏。
展覧会では落水荘の模型なども展示されていました。24年の時を経て、やっと実際に訪れることができました。
落水荘(カウフマン邸) 1936~39年
構造:鉄筋コンクリート造、地上3階地下1階建て
規模:1階 180㎡,2階 110㎡,3階 50㎡
ライト、67歳の時の作品です。もっと若いころの作品かと思いましたが、結構円熟期ですね。
1910年頃まで、プレーリー・スタイルの住宅で名を馳せたライトでしたが、その後スキャンダルにより仕事が激減、1913年日本から帝国ホテルの設計依頼を受けるも完成を見ずに離日(23年に弟子の遠藤新により竣工)、その後再び脚光を浴びたのがこの落水荘だといわれています。
日本で見られるライトの建築は、帝国ホテル、自由学園明日館(みょうにちかん)、山邑太左衛門別邸(現ヨドコウ迎賓館)があります。
帝国ホテルは中央玄関部分のみ明治村に移築されています。
明治村リンク
自由学園、山邑邸も見学可能です。
自由学園明日館リンク
山邑邸リンク
もっとも、ライトは91歳まで活動しましたので、これ以降も多くの仕事をなしています。
残念ながら、内部の撮影は、私の参加した$25のツアーでは禁止されていました。
$70位のスペシャルツアーもあり、そこでは内部撮影も可という噂もありましたが、定かではありません。
Fallingwaterのホームページで、内部写真やデータがご覧になれます。
FallingwaterのHP
平面図を見ると、よくこれだけの壁量で、全体のボリュームを支えているものだと思う。
断面を見ると床板は今でいうボイドスラブのようになっているようにも見えるが、資料不足でよくわからない。
コンクリートの手すりは、外から見ると少し重々しく見えるが、これも構造を支える梁としてある程度効いているのだろう。
一番低い天井高を3A(=1941mm)として、モジュールを定め、手すりの見えがかりの高さは2A(=1294mm)と決めたようだ。
平面、断面はすべてA(=647mm)を基準寸法として計画されている。(『S.D.S.1住宅』(新日本法規))による)
天才が自由奔放に設計したようにみえて、しっかりとモジュールを設定して恣意的になりすぎないようにコントロールしている。
寝室や書斎は、アメリカ人の標準的な体型からすれば少し小さすぎるのではと思われるほど、こぢんまりして人間的なスケールでした。
暖炉、備え付けの家具、建具や手すりなど、ディテールが隅々までよく考え抜かれていました。
ライトのほかの住宅に比べれば、装飾はそれほど多くなく、内外が相互貫入する空間構成の面白さ、素材の持ち味、そして周囲の自然の魅力をそのまま生かそうとする意図が感じられました。
建物全体を見終わり、半屋外の湾曲した通路をとおって、増築部分をみて、内部の見学は終わりです。
増築裏手の車寄せに出て、外回りの見学へ。ここから撮影は自由。
このような細い木なら、切っても構わないと考える人も多いだろうが、ライトの自然へのリスペクト、優しさを感じる。