今回は9月上旬に韓国に行ったときに訪れた、昌徳宮(チャンドックン)を紹介します。李氏王朝500年の都ソウルにある五大王宮のなかでも比較的保存状態がよく、当時の雰囲気をかなり正確に現代に伝えています。1997年にユネスコ世界遺産に登録されています。
Changdeokgung is a detached palace of Lee dynasty originally established in 1405, located in Seoul, South Korea. World heritage of UNESCO registered in 1997. I visited there in this September.
昌徳宮(チャンドックン)は、1405年、正宮だった、景福宮(キョンボックン)の離宮として太宗(テジョン)によって建造された宮殿です。1592年の豊臣秀吉による文禄・慶長の役(壬辰倭乱(イムジンウェラン))で敦化門(トムファンムン)のみ残され焼失し、1611年に再建されたのち、約270年に渡って李氏朝鮮王朝の政務が行われた王の御所として使用されました。敷地は、約44万7000平方メートルで、13棟の宮殿と北側には1623年に再建された李朝時代の後苑または秘苑(ビウォン)と呼ばれる王朝庭園があります。
正門にあたる敦化門は大韓民国最古の門、その先にある錦川橋は大韓民国最古の橋といわれています。儀式の執り行われた正殿の仁政殿、国王が執務をしていた宣政殿、王と王妃の寝殿だった大造殿など13棟の木造建築が現存しています。
昌徳宮の正門である敦化門は、ソウルの宮殿に現存する最古の正門です。1412年に建てられ、1609年に再建されました。朝鮮時代には2階に時を知らせる鐘と太鼓があったとされますが現在は残っていません。ここがツアーの集合場所になっています。
昌徳宮全体の案内図。今回は敦化門から宣政殿(案内図の1番から3番あたり)までを紹介します。
1411年につくられたソウルに残る、大韓民国最古の橋といわれています。
王宮の中心にあたる建物である正殿に入っていくときは、風水に従い正殿の正門と王宮の正門の間に流れる川を渡って入っていくように作られています。
韓国の王宮には必ず川が流れているそうです。古宮や王陵は昔から風水地理学的によい場所に立てられ、「気」があふれていると考えられました。宮殿の内外を区分するという意味だけでなく、「気」が逃げていかないようにするという意味があったようです。「水が吉」という考えもあったようです。
日本の神社では「鳥居」が聖界と俗界の境界であるといいますが、ここでの「橋」の意味はそれに近いものかもしれません。
日本の神社でも、本来、参道の中央(正中という)は神の通り道なので、人間は中央を避けて通るのが正しいというしきたりがありますが、基本的な考え方は似ていますね。
仁政門をくぐると現れるのが、昌徳宮の正殿である仁政殿。国宝225号に指定されています。王の即位式・朝礼・外国使臣の接見などの重要行事が行なわれ、臣下は前の広場で、位階に応じた位置につきました。
仁政殿は、1405年に建造された昌徳宮の政殿で、1592年の文禄・慶長の役で焼失し1609年に復元されました。現在の仁政殿は1804年に再建されたものです。この建物は、重層入母屋造りと呼ばれる構造で、外見は2階建てですが、中は吹き抜けになっています。朝鮮末期の建築様式を見ることができます。
建物は高い天井をもつ1層構造で、他の古宮と同様、中心に御座(王の座席)を置き「日月五峰図(イロルオボンド)」が飾られています。1900年代以降に導入されたシャンデリアなども見られます。
ちなみに、現在の韓国の大統領府は青瓦台(ブルーハウス)といわれ、青い瓦で葺かれています。青い瓦は韓国では、位の高い者がそこで政治など国家の大事を司っているという象徴的な意味をもち、そして国家が安寧に治るようにという願いが込められているのかもしれません。青という色は風水上でも何か意味があるのでしょう。
1804年に竣工した宣政殿は、王が日常的な政務を行なった便殿。学者・官僚の勉強や儒者の試験、宴が開催されたこともあったそうです。現存する宮殿の中で唯一青い瓦屋根をもつ貴重な建物です。
比較的こぢんまりしていて装飾も控えめな印象だ。ここで王が臣下と、国政について議論を交わしたこともあったという。