2016年4月14日 21時26分頃 熊本でマグニチュード6.5 最大震度7の大きな地震が発生しました。その後、ほぼ同じ地域で16日1時25分頃にマグニチュード7.3 最大震度6強の地震が観測され、規模(地震のエネルギー)は最初の地震のおよそ16倍にあたり、こちらが本震とされました。震度1以上の有感地震は18日12時現在までに527回観測され、余震の多さも特徴になっています。この回数は観測史上最多で、日奈久(ひなぐ)断層帯と布田川(ふたがわ)断層帯の二つにまたがって活動が起こっていること、さらにはそれが大分にある多くの細かい断層帯にも影響を与えていることなどが原因のようです。熊本地震と命名されましたが、大分県内を震源とする地震も起こっており、湯布院温泉のある由布市、別府市などでも、家屋の倒壊などの被害が出ています。

A serious earthquake occurred in Kumamoto and Oita prefecture, Kyushu district of Japan. The earthquake of April 14th registered a magnitude 6.5 and  the main earthquake of April 16th registered 7.3. They have had more than 500 quakes including small ones. A lot of buildings collapsed, more than 190 thousand people sheltered,  more than a thousand people were injured, and 42 people lost their lives at this time (April 18th, 2016).

現在まで、14日からの一連の地震で42名の方が亡くなられ、負傷者は1000人を超え、避難者数は19万人超となったと報道されています。災害の犠牲になられた方々のご冥福をお祈りいたします。また行方不明になっている方々の無事が一刻も早く確認されることを希います。負傷され、また避難を余儀なくされている方々にお見舞い申し上げるとともに、一日も早く、いままでどおりの生活を取り戻されることを願っております。

産総研:活断層データベース-1

余震が続き、地盤が不安定となっている現在は一般のボランティアの受入れはしていないとのことですが、政府が自衛隊の派遣増強を決めたことを受け、陸上自衛隊東北方面隊は昨日約1700人を九州に派遣しました。私の住む山形県の東根市にある第20普通科連隊からも約500人が合流しました。米軍の支援の申し入れも政府は受け入れたようです。やはり、孤立した地域の救助や不明者の捜索には、できるだけ多くの訓練された人員と、ヘリコプター(4機のオスプレイが出動)などの機動力が必要なのでしょう。

一部地域が孤立状態になっていると報道された南阿蘇村では、小学校時代の旧友が家族で移住し、鍼灸整骨院を開業して生活を営んでいました。自然が豊か、特に湧き水が澄んでいてきれいと聞いていて、いつか遊びに行こうと思っていたのですが、その前にこんなことになってしまいました。14日の第一報の後に無事をメールで確認できたのですが、16日の本震の後は音信不通となりました。TVで南阿蘇の家屋が倒壊している様子をみて、大変心配しましたが、昨日(17日)の午前中に無事でいると連絡がありました。停電で携帯のバッテリーがなくなり、またスマホでの通信状態が良くない、それで知り合いからFOMAの携帯を借りてつながったと。自宅は大きな損傷はないが、(いまは、避難所に行っても結構大変なので)、車の中で避難生活を送っているとのことでした。とにかく、家族全員(お母さん、嫁さん、子供3人と本人)が無事でよかったです。地域の方々含めて、まずこの危機的状況を乗り越え、次第に生活を取り戻されることを願っています。

今回、東日本大震災のような津波による被害はありませんでしたが、報道を見ていて、地震で直接建物が倒壊または大きな破損を被るケースが多かったように思われました。熊本城の石垣や櫓が破壊されたり、国の重要文化財である阿蘇神社の楼門や拝殿が全壊したのが象徴的でしたが、一般の木造家屋が崩れ落ちている軒数が非常に多いと思いました。

それについて、次のような記事を見つけました。

「東大地震研究所の古村孝志教授の分析によると、熊本地震は周期が1~2秒の揺れと、周期が0.4~0.6秒の短い揺れの2つのタイプが強かった。周期1~2秒の揺れは「キラーパルス」と呼ばれ、木造家屋に大きな被害をもたらす特徴があり、阪神大震災の揺れのほとんどがこのタイプだった。より短周期の揺れは崖崩れを起こしやすく、震源付近の被害状況と一致するという。」 (産経ニュース)

「キラー・パルス」については、TVでも報道していましたが、阪神・淡路大震災型の地震で見られた周期で、東日本大震災型の周期の場合と比較しながら、短時間で在来木造家屋を倒壊に至らしめる様子を映し出していました。

一方で、15日0時3分の震度6強の余震で、長周期地震動階級の最上階級の階級4が観測されたとのことです。長周期地震動階級は、固有周期が1.5秒程度から8秒程度までの高層ビルを対象に、地震時における人の行動の困難さの程度や、家具や什器の移動や転倒などの被害の程度を示す指標です。今回観測された階級4は、「立っていることができず、這わないと動くことができない。揺れに翻弄される」「固定していない家具の大半が移動し、倒れるものもある」状態だそうです。周期1~2秒の揺れ=「キラー・パルス」が同時に、高層ビルに長周期地震動階級4をもたらす要因となったのか、その辺はよくわかりませんが、確かに地上9階建てのマンションの1階部分が押しつぶされたり、高層建築の被害も散見されました。このような倒壊の仕方は、阪神淡路大震災の時にも多く見られたものです。

今回、「熊本で地震」と聞き意外に思われた方は多かったのではないでしょうか。私も阿蘇山の噴火は気になっていましたが、熊本で今回のような大地震が起こるとは思っていませんでした。

日本で起こる大地震は、プレートの境界が動く、「海溝型地震」(東日本大震災等)と、活断層がずれる「直下型地震」(阪神・淡路大震災等)に大別されます。報道等でご承知のように熊本地震は後者に該当します。熊本には日奈久断層帯、布田川断層帯などが走っており、主要活断層の評価では、高い(30年以内の発生確率が3%以上)に分類されていました。今回の地震は専門家からすれば、起こっても不思議はないものだったでしょう。しかし、比較的大きな前震のあとの本震、余震の多さなど、専門家も今までにあまり経験のない地震だったのではないでしょうか。それは前述のように複数の断層帯が連動したことが原因として挙げられ、専門家でもいつ収束に向かうか予測しづらい状況のようです。

しかし、熊本だけが特別、要警戒地域だったわけではありません、日本には2000以上の活断層があり、主要活断層だけでも約100か所に及びます。下図がその主要活断層を示した図ですが、ほぼ全国に分布しています。

主要活断層帯の位置および海溝型地震の発生領域と主な長期評価結果-1
日本政府 地震本部HPより

私の住む山形は、冬、比較的多くの雪が積り、つい最近まで全国の最高気温の記録(摂氏40.8度)をもっていたという、冬寒く、夏暑い、厳しい気候条件の風土ではありますが、四季の変化がはっきりしており、豊かな自然に恵まれ、何より、台風や地震、洪水などの大きな自然災害が少ないことで、住むにはよい場所だと思ってきました。しかし、今回調べてみると、山形にも活断層が走っており、しかも発生確率が「高い」に位置付けられているところもあり、いつ直下型の地震が起こってもおかしくないことを知りました。

山形県は、山形市などのある「村山」、米沢市などのある「置賜」、新庄市などのある「最上」、そして唯一海に面している地域として、酒田市、鶴岡市などのある「庄内」、四つの地方からなっていますが、なんとそれぞれの地域毎に、ありがたくも一つの独立した活断層が走っているのです。

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山形県 HPより

 

活断層が意外にも身近にあり、範囲も生活圏にかかっていたということは、山形県に限らずどの地域でもあるはずです。各都道府県のホームページ等で、活断層に関する情報を提供していると思いますので、一度調べてみてはいかがでしょうか。もっとも、筑波大学の境有紀教授は「マグニチュード6や7クラスの直下型地震は、日本全国どこで起こってもおかしくない。活断層も把握できているものはごく一部。把握できていない活断層でも地震は起こっている。今回のような直下型地震は、日本全国、どこで起こってもおかしくないと認識すべきだ。」と述べられています。現に、今回熊本と大分の県境付近で起こった地震に関しては、今まで知られていなかった活断層が震源になっています。全国どこでも震源になりうるわけですが、確認されている活断層の近くに住んでいる方は、防災意識を常に高くもっておいた方が良いとはいえるでしょう。

世界中で地震が起こるたびに、被害にあわれた方々の回復を祈ると同時に、建築に関わるものとして、どのようにこれから仕事に取り組んでいこうかと毎回考えさせられます。

私は地震の専門家ではありませんが、山形では、海溝型の地震よりも、直下型の地震に見舞われる可能性が高いといっていいと思われます。ということは、地元での仕事の場合、「キラーパルス」にも強い住宅・建築をつくっていくなり、直下型地震が起こることを常に念頭に置いておくことが必要なのかもしれません。

建築を設計するには、国の定めた構造(耐震)基準があり、まずはそれを守ることが最低限必要です。(そしてそれらの検討は構造設計の専門家に任せてしまうのが常です。)しかしそれ以上に、建築に携わる者は、分野を問わず、それぞれの地域で起こりうる地震の特性も考えた上で、地震に強い、(津波や台風、火事などを含めた)災害に強い、建物をつくるよう心掛けていかねばならないと思いました。

そして、地震は自分たちの地域には無縁と考えるのではなく、日本中どこでも大地震は起こりうる、いつも災害に対する備えを怠ってはいけないということを、今回の熊本地震からあたためて学びました。

日本人は古来、地震や台風、洪水、土砂崩れなど自然災害と否応なくつきあってきた民族です。自然とともに生きながら、力を合わせて、自然災害に対する備えをし、なんとか克服しようと知恵を絞ってきました。そういったことが、日本民族の気質、メンタリティに深く関わっていると思います。

まだ余震が続き、多くの方々が避難されているなかでは、他人事のように分析したり、結論めいたことはいうのは憚られるのですが、この災害を受けて、考えを一度まとめておくことは大切で、建築に携わるものとして避けて通れないと思い、投稿しました。

熊本、大分で被災された方々が、一日も早く日常をとりもどされることを心より祈っています。