東田川文化記念館からほど近くに、「古民家カフェ 藤の家」はあります。

現在は2005年に合併されて山形県鶴岡市の一部になりましたが、それ以前は東田川郡藤島町だった場所です。

After visiting “naa”, I went to “Cafe Fujinoya” which was established renovating 130-year-old farmer’s house in old Fujishima town now merged into Tsuruoka City, Yamagata Prefecture, Japan.

The name of “Cafe Fujinoya” may come from the name of old town.  Fuji means wisteria in Japanese, and Fujinoya means “a house of wisteria”. The language of flowers of “Fuji=wisteria”is ” We welcome you”

The concept of “Cafe Fujinoya” is that “Japan meets West” and “mind of omotenashi(hospitality) ”

「藤の家」の名は、「藤島」に由来しているのでしょうか?

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
行く途中で東田川文化記念館の前を通る。いわゆる擬洋風建築。また別の機会に詳しく取り上げたいと思います。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
駐車場に車を停めてカフェに向かう
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
ただの民家とは思えない、立派な石の門柱に迎えられる。学校の門のよう。「営業中」ののぼりに一瞬「ん?」と思うがこれくらい目立つものがないと、初めて訪れる人は存在に気づけないかもしれない。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
右側が玄関。築130年の農家住居を、その場でカフェに改装。もともとここに住まわれていたご家族が運営されています。2012年11月オープン。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
玄関で靴を脱いで
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
玄関から先はまっすぐに廊下が延びていて、その両側に、左右にそれぞれ二室ずつ、客室がある。この店は喫茶と食事のみで、宿泊はとらないそうです。(宿泊まで考えるといろいろと大変とのこと)廊下は天井高を高くすることもできたが、空調の効率等も考えて天井を貼っているとのこと。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
空いていた、(玄関から見て)右奥の部屋に案内されました。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
とても立派な神棚があります。さすが出羽三山のお膝元。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
部屋の奥から振り返ってみたところ。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
驚くほど天井が高いわけではないが、神棚や書、調度品などが、格調と豊かさを空間に与えています。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
透かし入りの和紙の貼られた障子も演出に一役買っています。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
藍染の暖簾は、こちらのお婆さんの嫁入り道具の布団の生地を仕立て直したものだそうです。庄内の文化、素晴らしい。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
通用口の方から、玄関から延びる廊下を見たところ。廊下はL字型になっており、玄関の突き当り(写真左手奥)が厨房です。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
和洋中、いろいろな要素があるのだが、ちぐはぐな印象がない。オーナーのセンスが光っています。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
ところどころに使われている、緋毛氈(赤い布)がアクセントになっていて、古民家に洒落た雰囲気をもたらしています。天井の黒や、本来ミスマッチの洋風のアンティーク照明も悪くないですね。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
玄関から見て右側の二室の間の障子を開け放って、庭の方向をみたところ。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
写真左の部屋はフローリングにテーブル、右の部屋は畳敷きに座卓の間、普段の営業時は障子で分けて使っているようです。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
玄関の右手前の部屋より庭を見たところです。それほど広くはないですが、落ち着いたよい庭園ですね。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
玄関ポーチの方から同じ庭を見たところ。左側が上の写真の部屋。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
玄関右手前の部屋から奥を見たところ。色のバランスが非常によく、決まっています。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
書画骨董の類も、この家に受け継がれてきたものや、ご主人や奥様が好きで集めたものらしいのですが、趣味がいいし、全体に調和がとれていますね。

運営されている奥様のお話では、庄屋でもない、代々普通の農家の住まいだったということですが、神棚にしても庭にしても門にしても、とても立派です。ちょっと驚きですね。庄内は、狭い盆地の内陸・山形市のある村山地方と違って、広大な平野がある昔からの米どころで、江戸時代から豊かだったということでしょうか。庄内地方は、北前船で、大阪、京都とも文化交流もあって、商業も盛んでした。その影響で、上方の雅な文化が数百年前から入ってきていたので、人々の芸術などに対する意識も高いように感じられます。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
(玄関から見て)左手前の部屋。六畳の畳の間。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
床の間には掛け軸。ここは比較的、純和風の意匠ですね。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
書や襖絵もいいですね。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
奥には庭が見えます。ルームエアコンと和風ペンダント照明に工夫の余地がありそうな気がしますが、まぁご愛嬌か。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
玄関からみて左手奥の部屋。こちらは床フローリング。天井は小梁を顕わしにして、木造洋小屋内部のような雰囲気でもあります。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
ここでも、赤、白、黒のコントラストが効いていますね。ぎりぎりのところで、嫌味にならない絶妙のバランス。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
結構、いろいろなものが置いているのですが、あまりうるさいと感じられないのが不思議です。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
家具、置時計、その他の調度品などがいい雰囲気を出していますね。柱にも書が!
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
外に出て、上の写真の部屋の出窓を見たところです。外観はそっけない印象。外にはあまり手間をかけないで、内部を集中的に直したような感じです。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
同上。勝手口側の立面。庭との間に土間。普通はこちらまで回り込むお客さんはあまりいないでしょうね。

img002

「藤の花言葉は「あなたを歓迎します」私たちは藤島地域のもてなしのこころです。藤の里 「藤島」」

これが店の名の由来ですね。昼食を食べた後に行ったので、コーヒーのみでしたが、おいしかったし、雰囲気も十分に楽しめました。次は昼か夜に、食事に伺いたいと思います。

img003

「古きものに命を吹き込み、和と洋が出会い、古民家カフェが誕生しました。四季を感じながらごゆっくりお過ごしください。」

この言葉で、この店のコンセプトがよくわかったような気がしました。

前回見た「菜ぁ」は、高い天井をうまくいかし、あまり手をかけすぎないで、空間の素の形、縦に抜けた豊かなボリュームでもてなすといった感じでした。古民家本来のよさを活かした空間活用といえるでしょう。

一方、「藤の家」は同じ古民家の再生でも、少し手法が違います。

一番最初に見た、玄関から右奥の部屋に関しては、架構や造作も含め、いかにも古民家という空間でしたが、それ以外は、古民家とそこに住まう家族が百年いや数百年にわたって大切にしてきた、「建築」だけでない文化的な環境そのものを活用しながら、現代的な要素も取り込んでいかに活性化させるかに主眼がおかれているように思います。

建物の周囲に古くからあった庭を取り込んで、日本建築の一つの特徴でもある、内と外が視覚的に連続した、自然と対話する空間づくりがなされていました。(比較的水平性を指向)

創建当初の古民家に戻すのではなく、あえて「和と洋が出会う」というコンセプトで、内装にも手をかけ、同様の方針で、家具や調度品も意識的に選ばれたのではないかと思います。

純粋な古民家とも、洋館とも違う、ちょっとユニークな世界がそこにありましたが、にぎやかすぎず、押しつけがましくもなく、ちょうど良い居心地の良さをもっていました。

驚くような圧倒的な空間はありませんでしたが、こじんまりとして、包まれた感じの人間的スケールをもちながら、一方で庭への視線の抜けもあり息苦しさも感じさせない、バランスの良さがあったように思います。

きっと、この地域の人々の文化的遺伝子のレベルの高さと、「藤の花」の花言葉のようなカフェでありたいというオーナーの思いが、このような、やさしくセンスのある空間を生み出したのではないでしょうか。

古民家を再生するといっても、いろいろな方法があるのですね。

その古民家のもっている、潜在的な力を読み取り、引き出してあげることが重要なのでしょう。

これからも探っていこうと思います。