11月23日に訪れた、箱根のポーラ美術館を紹介します。箱根自体初めての訪問です。
ポーラ美術館につきました。入場料は大人1,800円と少し高め。連休中ということもあってか、結構人が入っていました。
ポーラ美術館は設計・監理は日建設計、施工は竹中工務店で設計期間1994年12月~99年10月、施工は2000年4月~2002年5月。敷地面積56,919㎡、美術館の延べ面積は8,098㎡。地上2階地下3階建。鉄骨造一部鉄骨鉄筋コンクリート造。全館免震構造。富士箱根伊豆国立公園内にあるため、自然公園法で、高さを8m以下に抑えている。
日建設計はグループ全体で社員約2500人、一級建築士が1000人以上いる、巨大組織設計事務所。担当だった安田幸一さんは、この美術館の竣工後の2002年に退職され、東京工業大学助教授となられ、現在教授。
この美術館で安田さんは、2003年村野藤吾賞、2004年日本建築学会賞を受賞しています。
以下のカギカッコ内は「GA JAPAN 58」に掲載された設計者である安田さんによる解説です。
「個人のオーナーが長年に渡り収集した印象派絵画、日本絵画、東洋陶磁器、化粧道具などの膨大なコレクションを展示収蔵する美術館である。」
「敷地は富士箱根伊豆国立公園内仙石原の小塚山のふもとに位置し、美術館は森の中に埋没するように建っている。豊かな自然を背景とし、本来この場所が保有していた動植物の生態系を極力損なうことなく、建築が環境と対峙しながら建つことを意図した。」
「広大な敷地内の動植物や地形、地質、水流の調査を詳細に行い、沢や谷を避けた最も影響の少ない位置に美術館を配置し、直径76m、地下三層分のすり鉢型構造体を掘削した。」
企画展は「自然と都市」印象派を中心に70点の絵画が展示されている。コロー、モネ、ルノワール、ピサロ、ゴーガン、スーラ、セザンヌ、ロートレック、シャガール、モディリアーニ、ユトリロ、ダリ、ピカソ…その作品のすべてがポーラ美術館蔵だというのだからすごい。
「緩やかな傾斜地に建ち、自然公園法の基準により規制された高さ(8m)に抑えた美術館は、周囲への圧迫感を最小に留めている。」
「建物の屋上の透明なガラスエントランスホールが美術館の入口であることを示している。」
「美術館の平面は建築の基本型のひとつである十字形になっており、ロビーを中心に据え、展示室や諸室が取り囲む明快な動線とし、四隅の三角形のデッキは、各階で諸室から直接外部に避難でき、さらに空調や排煙の設備スペースとして有効に利用されている。」
客のメインの垂直動線がエスカレーターしかない(階段はよく見えるところにはない)ので、避難はどうなっているのかと思ったが、各階から外に直接誘導できるようになっているようだ。平面図を見るともちろん階段やエレベータはあるが、それらの存在はほとんど意識されない。
美術館リーフレットより。 常設展示を含め、収蔵作品には素晴らしいものがそろっている。
平面図・断面図(「建築設計資料集成[展示・芸能]」(丸善)より)
「ロビー先端に設けられたカフェからは、自然林の豊かな緑の風景を切り取る巨大なピクチャーウインドーを通して、美術館自身が箱根の深い豊かな森に囲まれていることを改めて実感できる仕組みになっている。」
野外彫刻マップ。美術館の周囲には散策路が回っていて、外でも散歩しながら美術を親しめるようになっている。
どこにいても豊かな自然が感じられ、コントロールされた柔らかい自然光が入ってきて、居心地のよい美術館でした。ディテールに対する徹底したこだわりをもちながら、適度に抑制のきいたデザインには好感がもてました。駐車場から美術館にアプローチするときに、事務所などのバックヤードが少し見えすぎるのがちょっと残念という気がしました。次に移動しなければならなかったので、短時間の見学でしたが、もっと長く滞在したいと思える美術館でした。