10月23日、東北大学工学部で中国人建築家・王昀氏の講演会があり、参加しました。
東北大学工学部 都市・建築学教授の五十嵐太郎さんからご案内いただきました。
五十嵐さんは大学の建築学科の先輩の建築史家・建築評論家で、映画やサブカルチャー論なども含め、大学での教育だけでなく、幅広く言論活動をされています。
かつて、私ともう一人の同級生が、五十嵐さんの卒業設計(東京湾に原子力発電所をつくるという計画!)をお手伝いさせてもらったことがありました。安藤事務所時代は、なかなかお会いできませんでしたが、山形にもどってきてからは東北大学に比較的近いということもあり、ときどき、こういうレクチャーなどにお誘いいただいたりしています。ありがたい限りです。
王(WAN)氏は、1991年から、およそ10年にわたり東京大学生産技術研究所の原広司研究室で建築を学ばれたのちに帰国、現在は北京建築大学建築設計芸術研究センター(ADA)主任で、21世紀北京を代表する建築家です。
講演は、スライドを映しながら行われ、まず、音楽(楽譜)や書道を、そのまま、建築の平面に見立てて、その部分を切り取り、スケールを設定して、建築的空間にするという、空間実験について語られる。模型やCGなら、それほど驚かないが、人間の入れる空間として、1:1(原寸大)のスケールで鉄筋コンクリートや鉄板で実現しているのがすごい。
そして、独立後今までの15あまりの建築作品について。ル・コルビュジエ、バウハウス、テラー二などを想起させる、白いモダニズム建築。
現代中国では、むしろ、ヨーロッパの古典的装飾のある、いわゆるポストモダン的建築が好まれて主流となっており、日本の状況とちがい、純粋なモダニズム建築はむしろよく目立つし、それを続けることは一つの挑戦といえるだろう。
王氏が、中国の大学で建築を学び始めたころは、ソ連で社会主義的リアリズムとしての建築を学んできた先生たちがおおく、「建築は住むための機械である」といったル・コルビュジェ、ミースなどを「悪い建築家」といって批判していたそうだ。
しかし、王氏が原研究室の集落調査のあと、ヨーロッパで、たとえば、ル・コルビュジエのサヴォア邸などを見たとき、それは、決して、ただの冷たい機械のような建築ではなく、人間的な温かみのあるものだと感じて、大学時代のある種の洗脳が解けたという。
王氏が、中国人としてのアイデンティティを意識しながら独自のモダニズム建築を追求するという、現代の中国的状況の中ではあえて困難な道を歩んでいることに共感を覚えました。
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