9月23日旧ホイットニー美術館の次は、F.L.ライトの、ソロモンR.グッゲンハイム美術館へ。2000年に年末年始の5日間の短い休みをつかって、たった2日くらい、ニューヨークに滞在したことがありましたが、その時以来2回目です。(NY在住の友人の玉木君の話だと、NYに旅行に来た知り合いの中で最短記録らしい。(苦笑))

1943年に依頼を受けて、建設に至るまで12年、そしてさらに4年後の1959年の竣工まで、17年の歳月をかけてつくられた美術館です。

建築家は、執念深さ、辛抱強さが必要な職業だと改めて思います。

F.L.ライトについては、10月13日~17日の日記で触れています。興味のある方は是非アーカイブをご覧ください。9月20日にBeth Sholom Synagogue、Fallingwater、Duncan Houseという3つの作品をすでに見ており、今回4つ目のライト作品です。

アメリカの鉱山王、ソロモン R. グッゲンハイムの依頼を受けて設計された美術館です。

最近では、分館である、スペインのビルバオ・グッゲンハイム(フランク・O・ゲーリー設計)の方が多くの方に知られているかもしれません。

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徐々に独特の形状が姿を現す。
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前の横断歩道をわたる子供たち。開館前ののどかな風景。
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美術館全景。後ろにある四角い高層棟は増築部。

施主のグッゲンハイムは、上に行くにしたがって次第に拡大していく、らせん状の案を見た時に、こういったそうです。
「あなたならできるとわかっていました、ライトさん。私は絵をかけるためだけの単なる美術館以上のものがほしかった。かつてなかった、芸術鑑賞の体験をさせてくれるような、今までとは全く違ったものがほしかったのです。あなたはそれを作ってくれました。」

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ライトは度重なる、延期や変更に直面したそうです。1949年のソロモン・グッゲンハイムの死後、美術館自体のプログラムが変更され、その後も、建設物価の高騰などの要因で、幾度も変更が繰り返され、現行案は1956年の実施設計案によるものです。

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開館前に人々の行列ができている。建物に備え付けられたプランターのツタが心を和ませる。NYの美術館は、入館時に、荷物チェックをおこなうところが多かったです。入り口前でチェックを受けている人がいます。
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1階吹き抜け内観。自然光が降り注ぐ。しかし、らせん状の展示空間は、展示替えのため観覧中止となっていました。(今回はそういうところが多かったです。残念。)
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建築空間自体は素晴らしいが、床や天井が傾き展示壁が湾曲しているらせん状の展示室は落ち着かないとか、建築の自己主張が強すぎて美術の引き立て役にならねばならない本来の美術館の役割から逸脱しているとか、賛否両論あるでしょうが、間違いなく近代建築の歴史にのこる名作といっていいでしょう。

 

 

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植栽の中に設けられた、樹脂製のトップライト
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ミュージアム・レストランへの入り口
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ミュージアム・レストラン THE WRIGHT
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建物側面に設けられた丸いポツ窓(内部はレストラン)
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丸窓。嵌め殺しのようだ。
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一般客は出入りしない、通用口の門扉もしっかりデザインされています。  「絵を掛けるための単なる美術館以上のものを」という、ソロモン・グッゲンハイムの思いは、確実に、ビルバオ・グッゲンハイム美術館にも、受け継がれているといえるでしょう。