新年あけましておめでとうございます。

旧年中は、試行錯誤の中、何とか続けてきた空間日記にお付き合いいただきありがとうございました。

年末は日記を更新する時間が取れず、ご愛読いただいていた皆様への感謝の言葉もお伝えせぬまま年を越し、誠に申し訳ございませんでした。

本年も、時間の許す限り、投稿を続けてまいりたいと思っておりますので、ご愛顧のほど(笑)よろしくお願い申し上げます。

A Happy New Year!

Today I went to Shinto Shrine, Suwa Jinja in Yamagata, to do Hatsumode. Hatsumode is the first shrine visit of the Japanese new year. It is an old custom in Japan to go to Hatsumode  from 1st to 3rd of January. Generally we wish good fortune of the new year.

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諏訪神社(山形)

今日は初詣に山形の諏訪神社に行ってきました。

諏訪神社は、長野県の諏訪湖近くの諏訪大社を総本社とする神社です。諏訪大社自体は7世紀頃には文献に登場しています。諏訪神社と名の付く神社は、全国になんと約25000社あるそうです。いたるところで目にする現代のコンビニ、セブン・イレブンですら日本全国で約18000店ですから、明治以前にそれを大きく上回る数を誇っていたとは驚きですね。

この諏訪神社の全国への拡散は諏訪信仰に基づくものらしいですが、神道の中でもこの一派がこれだけの勢力をどうやって獲得できたのかは手元にある資料からはわからず、もう少し調べてみたいと思います。

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参拝のために並ぶ人々。背後に山形市民に愛される千歳山。山自体が信仰の対象ともいわれる。

山形の諏訪神社はその中でも比較的大きく歴史も古いのではないかと思われます。

以下、今日、神社でいただいた「諏訪神社縁起」によりますが、

今から500年以上前の1474年、山形は晴天続きで雨が降らず、水が枯れ、農作物の収穫にも影響を及ぼし始め、やがて農民たちは、精神的にも肉体的にも疲れ切ってしまいました。

そんなある日、山形城主 斯波義春公の夢の中に白髪の老人が現れ「あなたに神を信仰する気持ちがあれば、東南の方角に森をつくり神様を祀りなさい。」とのお告げがあったそうです。

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諏訪神社の一帯は、山形の市街地の中では比較的大木が多い。やはり斯波義春公がつくった森が発祥なのか。

翌朝、城下に夢の中でみた老人を見かけ、「あなたはどこから来たのか」と問いかけると「信州からきた」と答えました。

そこで城主は神様に祈る思いで、農民たちのために当時河原だったこのあたりに樹木を運び森をつくり諏訪大社から神様の御分霊をいただき、神様を祀りました。

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信州の諏訪大社の御分霊が祀られている

そして、雨乞いのお祭りが行われ、三日目の祭事の最中に突然雲が立ち込め、大雨が降り始めたそうです。

(雨乞いは、木の桶などいろいろなものをたたき、雷のような音を出して行われたといわれています)

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鳥居の前から長蛇の列

城主も農民も大喜びし、その後、その年で初めて茄子を収穫することができたそうです。それ以来、茄子は神様のおかげであると信じられており、毎年9月27日のお祭りの日に5個ほど茄子を持参し神様に備えた後、2個ほど持ち帰り食するという習慣があるそうです。

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本殿の前にある、白い社殿。道路拡幅以前は、この位置に本殿があったという。

私も、山形育ちで、諏訪神社の前を何百回も通っているのですが、こんなエピソードは初めて知りました。(ちなみに、この神社一帯は諏訪町という町名になっています。)

夢のお告げの部分は創作だとしても、斯波義春公が、森や神社をつくったというのは史実なのでしょう。でも、この辺が河原だったというのは現在の地理からは想像できませんね。山形盆地は馬見ヶ崎川のつくった扇状地ですから、治水の技術の発達していない当時は、川が蛇行したり、増水のたびに位置を変えたりしていたのかもしれません。

子供のころから、この諏訪神社一帯は、山形市の中心市街地であるにも関わらず、鬱蒼とした森になっていたような記憶があり、よい雰囲気だなと思っていました。

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本殿が次第に見えてくる。

しかし、都市計画による、道路の拡幅があり、樹木は極力残したようですが、以前よりもだいぶ森は薄くなってしまったような感じがします。30年前の記憶なのであいまいですが。

本殿も、道路拡幅時に、移転新築されたようです。山形の諏訪神社は、建物自体には歴史的な価値はありませんが、大木の残された周辺環境も含めて、城下町としての山形の歴史を感じさせる場所です。

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鳥居をくぐり、手水舎を兼ねた門のような白い社殿を通り抜けると、境内には出店が並んでいます。

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今回、初詣というのは、宗教的な行事というよりも、日本人にとって年始のひとつのエンタテイメントになっているのだな、ということを再確認しました。

しかも、神社の中で、一つのストーリーを描いて完結しており、なかなか満足度の高いすぐれたコンテンツなのでは?と見直しました。

境内に出店があったりして、肩肘張らないリラックスした感じもなかなかいいなと思いました。

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長い行列をつくって、家族や友人、恋人と寒い中並びながら、会話を交わす。

そして境内に入ると出店があり、そこで子供は親におねだりをして、綿菓子や焼きそばなどを買ってもらう。(帰りがけの方が多いかも)

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綿菓子の袋も世相を反映していますね。ふと左に目をやると、明治から昭和期の偉い宮司さんの胴像が。
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「バナナチョコがほしいな」

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昔はチョコの茶色一色だったような気もするが、今はこんなにカラフルに。アートとして面白いけど、あまり食べる気はしないな、この歳では。

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焼きそばや唐揚げ、山形名物玉こんにゃくも売っている。黄色いテントは派手だけど、朱色の多い神社ではアクセントになっていました。
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もうすぐ参拝
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寒い中、順番を守って並ぶ人々。日本人の礼儀や道徳は、こんなところで培われているのかも。
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狛犬(右) 口を開いている 阿形
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狛犬(左) 口を閉じている 吽形
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新年の幸福を祈るひとたち

狛犬を左右に見て、参拝。お賽銭を賽銭箱に投げて、大きな鈴を鳴らし、二礼二拍手一礼。

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扁額は内閣総理大臣 佐藤栄作の書
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参拝が終わり走り出すこども
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樽からお神酒を注ぐ巫女さん
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お神酒が振舞われる。

参拝が終わると、お神酒をいただく。

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そして社務所に付設された売店に向かう
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そこで、幸福をもたらすアイテムとして、破魔矢、熊手、お守り、神札などを購入。
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占いの一種であるおみくじを購入する人も大勢いる。おみくじの結果を見た人は大概、それを持ち帰らず、すぐそばにある木に結わえて帰る。
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諏訪神社の、道路を挟んで向かい側には、常林寺という寺院があり、こちらにも立派な樹木が生い茂っている。これも500年前につくられた森の一部か?

このような初詣はおそらく、ディテールの違いはあっても、山形だけでなく全国どこでもみられる光景ではないかと思います。

キリスト教にも、クリスマスなどのエンタテイメント性のある行事がありますが、教会自体は、もっと厳粛なイメージがあります。神道の、宗教のようで宗教でないようなゆるい信仰のあり方は、日本らしくていいなと思いました。

でも、多くの日本人が、いま世界で起きている宗教的対立をよく理解できないといわれる一因もその辺にあるのかもしれませんね。

同じ日本の文化でも、「クールジャパン」と賞賛されたかと思えば、他方では「ガラパゴス」と揶揄されたりもする。(時代や状況によってその評価が変わることもあります。) でも、それは対象そのものが変化しているのではなく、我々が単に同じものの表と裏を見ているだけなのかもしれません。

ふだん何気なく接している街並みも、ちょっと寄り道して調べてみると面白いことがいろいろとわかってきます。これからも新しい発見を求めて街歩きしてみたいと思います。山形にもまだまだ知らないことがたくさんあると気づけた、いい元日でした。

30年ぶりの山形での冬の暮らしです。

本年もよろしくお願い申しあげます。